予算はマネジメントツール
〜国の予算と企業の予算〜

株式会社MELコンサルティング 常務取締役 渡辺晴樹

国の予算

平成22年度予算は、民主党政権が誕生して初めての本予算になる。平成21年12月25日の閣議で政府案が決定された。
もともと予算とは、「予」=あらかじめ、「算」=けい算する、という意味である。

予算とは、実質的には「国がどのような政策や目的のために、どれだけ支出活動を行うか、また、それをまかなうための財源をどのようにして調達するか、という財政の内容の見積りを一定の期間について明らかにしたもの」(『図説日本の財政』)であり、形式的には「一定の期間(会計年度)における政府の収入と支出、債務負担などについての計画であり、法律あるいはそれに準じるものとして議会の議決と承認を得たもの」(『行政学の基礎』森田朗編)である。予算は、要約すると、1.予算の編成、2.予算の審議、3.予算の執行、4.決算のライフサイクルをたどり、これを予算の循環という。(国の予算の話:社団法人政府資料等普及調査会より引用)

予算には、「本予算」・「補正予算」・「暫定予算」などがある。国の予算の場合、毎年1月中旬から下旬頃に通常国会が開かれ、その中で来年度(本年4月〜翌年3月)の本予算についての議論が始まる。本来、3月31日までに本予算が決まらなければ、国の運営が成り立たなくなる。予算に則って国や地方時治体は運営しているからである。3月31日までに予算案が議会を通らなかった場合は「暫定予算」になる。公務員の人件費など、必要最小限の経費となる予算を暫定的(仮措置)に組むことで、混乱を抑えることができる。ちなみに暫定予算は本予算が可決されると同時に失効となる。

企業の予算

企業における予算とは、将来の経営ビジョンに基づいて設定した目標を数字で表現したものである。予算には、「売上予算」、「費用予算」、「投資予算」などがある。また、予算は2通りの設定の方法がある。1つは、「トップダウン型」で会社が各部門の予算を決める方法である。これは各部門の意見が反映されないというデメリットがある。もう1つは、「ボトムアップ型」で各部門が自主的に予算を決め、集計することで全社予算を設定する方法である。これは各部門の予算を合算して設定するので、会社全体として必要な利益目標とかけ離れてしまうといったデメリットがある。
実際の予算作成では、「トップダウン型」と「ボトムアップ型」のそれぞれの特徴を踏まえて、会社と各部門が予算原案をもとに議論を重ねる予算委員会などを設置し、組織全体として納得感のある予算作りが必要である。さらに、予算を確実に実現するためには、「予算管理」が重要である。
予算管理とは、企業が予算を確実に達成するため、実際の活動と当初の予算とを比較して業績を分析することである。この分析を踏まえて各部門にフィードバックし、戦略や活動の修正を促すPDCAサイクルの一連の活動をいう。

予算管理を効果的に行うには、以下の条件が求められる。

  • 1.トップマネジメントから現場の担当者まで、全社員が予算管理の必要性を認識し、積極的にその運営に参加する態勢が整っている。
  • 2.予算管理の基本的な方法が理解されている。
  • 3.全社的な管理組織体制が確立されている。
  • 4.予算、実績、両者の差異、といった数値情報の処理システムが構築されている。
  • 5.企業規模に適した管理会計制度が整備されている。

また、予算は業績評価などの管理ツールとしても大きな威力を発揮する。なぜなら、予算は過去からの変遷、経営環境の変化、市場の変化など、会社の様々な状況を加味して設定されており、それを実績値と比較することで多くの有用な情報が得られるからである。業績の評価をしっかりと行い、組織をコントロールすることが重要である。(MBA用語集:株式会社グロービスより引用)

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