大震災に想う
〜問われる震災後の復興支援〜

株式会社MELコンサルティング 代表取締役会長 安田芳樹

奇跡の回復の歴史

2011年3月11日、東北・関東の太平洋沿岸を中心に発生した未曾有の天変地異、東日本大震災から1ヶ月が経過した。いまだ混沌とした状況の中、一方では逞しく生きようとする被災者や経営者の姿も映像を通じて映し出されている。「国難」である。国難ではあるが歴史的に見ればこの国は、地震や台風などの自然災害ばかりでなく、古くは白村江の戦い、元寇などの他国の来襲、飢饉、そして明治以降の度重なる戦争など、幾度も国家的危機に遭遇し、そして幾度もそれを乗り越えてきた。あたかもそれは、国難が日本や日本人を強くしているようにさえ思えてくる。
極めて悲惨な状況の中でも冷静さを失わず、相手の気持ちになって他者を慮り助け合いの精神を忘れない。そして、大きな困難に立ち向かう気骨と勇気を持つ。今、メディアを通じて多くの日本人が語っているように、私も「この国は素晴らしい」と心底から思う。世界中に誇りうる日本人が持つ素晴らしい「心のDNA」、これこそを武器に、オールジャパンの取り組みで、物心両面で今後の復興を急ぎたい。

大規模支援の財源づくりを急げ

今、菅内閣は東日本大震災からの復興に向け、補正予算の編成に入っている。しかし、周知の通り、その財源の手当てはついていない。被害総額が20兆円以上と言われる今回の大震災。先の阪神大震災で政府は、3回の補正予算で計3兆2千億円の費用を投じた。当然、今回の震災ではそれを上回る大規模の予算が必要となろう。中途半端な資金では「復旧」は可能でも「復興」にはいたらない。問題は財源であり、その財源捻出のスピードである。

1.消費税率の引き上げを急ぐ
財源確保の第一の手段は消費税率の引き上げであろう。消費税の引き上げについては、ここ数年間の政策課題にもなっているが、今こそ時限立法で消費税率を引き上げるべきである。消費税率を1%上げると、一年間での税収は約2兆円ほど増加する。仮に3%の引き上げを行えば6兆円余りの財源が確保できることになり、2年間行えば12兆円にもなる。勿論、ここでの消費税率の引き上げは、すべて復興の資金として使われることは言うまでもない。増額された消費税の全てが被災地・被災者の復興のための「期間限定消費税」となれば、決して消費の冷え込みにつながったり、経済活動にマイナスの影響は及ぼさないはずだ。経済は生きている。消費税率の引き上げは、むしろ東北の復興に向けて、国民全体がオールジャパンの精神で前向きで旺盛な消費マインドに向かう誘因となるのではないだろうか。

2.国債発行で財源をつくる
消費税率の引き上げ率にもよるが、早期の復興に向けての財源としては、他の経済政策も必要となり、まとまった資金を捻出するためにはやはり国債の発行も課題になろう。
日本国債については、先月、米国の国債格付け機関がAAAからAAマイナスに格下げをしたばかりである。しかし、その後の日本国債は安定しており、震災後も暴落などにも至っていない。格付け機関は、日本のこれ以上の赤字国債の発行に警告を発してはいるが、条件つきでの国債発行に財源の活路を見出したい。
かつて、フランスでは利子が付かない代わりに相続税が免除される、条件つきの国債を発行した経緯がある。現在、国民新党は「無利子国債の発行」を提案しているが、この条件つき国債の発行を実施する。
日本人の個人資産総額は1400兆円と莫大な額にのぼる。しかし、その資産の相続による相続税は年間わずか1兆3000億円程度となっている。つまり、資産家は上手に節税(?)しているわけだ。何とかして1400兆円の資産を引き出したいものではあるが、現行の税の枠組みでは自ずと限界があるのは明らかである。無利子ではあるが、相続税が免除・軽減される「東北復興のための国債」であれば、資産家がより合理的に税金を圧縮できることにもなり、奏功するのではないだろうか。

今一度、輝きを取り戻すために

いずれにしても、間違いなく国難であり非常事態の時である。今までの経済政策や都市政策の引継ぎではなく、新しい国づくりのためのグランド・デザインが早急に求められる。我々にジックリと腰を据えての時間は与えられていない。大胆かつ柔軟な発想で、東北を始めこの国の早期の復興を願うと同時に、我々一人ひとりもオールジャパンの精神で東北のみならず、この国全体が元気を取り戻す力となるよう取り組んでいきたい。

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