影響力のメカニズム

株式会社MELコンサルティング 代表取締役社長 安田芳樹

人は社会生活の中で知らず知らずのうちに何かの影響を受け、様々な判断を下しています。例えば、ある商品を購入したり、説得に対して承諾をするような場合も同じで、ある判断に際しては、いくつかの因子が影響を与えています。 七面鳥の母鳥は、ヒナ鳥の「ピーピー」という鳴き声に反応して育児をすると言います。その七面鳥の天敵であるイタチの人形に、テープレコーダーを埋め込みヒナ鳥の鳴き声を流しても、母鳥は面倒をみようとするそうです。 こうした「自動的」な反応は人間の行動も同じです。例えば、「高価な商品=良い商品」という図式です。このように我々は、標準的な原理、ステレオタイプに従おうとする効率的な行動の形態を採用することが多いのです。社会心理学者のR.チャルディーニ教授は、人間の行動に影響を与える見えないルールとして以下のことを指摘しています。

速報性のルール

「他者が自分に何らかの恩恵を施したら、似たような形でそのお返しをしなくてはならない」という考え方です。贈り物をもらった時、お返しをせずにはいられない行動は勿論、マーケティングのテクニックとしての商品試用期間や試供品提供も返報性の法則に合った施策と言えるのです。 また、相手の譲歩に対してはこちらも無意識のうちに譲歩している、といったケースも返報性のルールに沿った行動です。

社会的証明のルール

このルールは、「我々は他人が正しいと考えているかどうかに基づいて物事の正否を判断する」というものです。ある状況のもとで、特定の行動をする人が多くなると、それが正しい行動だと見なされるというわけです。「多くの人の同一行動」があるように仕組むことによって、「正」が成立するわけですから、これもマーケティング活動に応用が可能です。

好意のルール

同じ言葉を受け取っても、発信者が誰かによってその「受け止め方」は異なります。自分が好意をもっている人から何かを頼まれると「イエス」でも、好意を感じない相手には「ノー」となるわけです。この好意のルールを引き出すもっともシンプルな方法が「類似性」にあると言われます。 例えば、ファッションの世界では、自分と同じような服装をする人を好み仲間と感じるのです。勿論これは服装だけでなく、年齢・経歴・趣味・習慣など属性一致が類似性を生み出す要因を作り出すのです。

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脳活動と独裁者

株式会社MELコンサルティング 代表取締役社長 安田芳樹

脳の研究が進んでいます。そして、人間の精神構造と脳科学の関係も徐々に読み解かれています。多発する残忍な事件も、エスカレートする反社会的な行動も、突き詰めれば人間の脳がなせる出来事です。ヒトラーやスターリンなど歴史上、残虐極まりない行動をとった独裁者たちは、いずれも子供時代には父親の暴力など極端な虐待を受けているそうです。 冷酷無慈悲な親の行動が、無意識のうちに子供の性格形成につながり、その記憶(脳科学的には、側頭葉内部にある扁桃体と呼ばれる部位に記憶される)は決して消去できないものとなってしまうのです。そして、やがて彼らは「偉大」と「異常」を履き違え、凄まじい所業を繰り返すのです。企業経営者にも、良くも悪くも独裁者がいるようです。では、独裁者に共通しているものは一体何なのでしょうか。

人間不信と他人への侮蔑

彼ら独裁者は共通して青少年期に際立った孤独感を体験しています。そして、そこには根深い人間不信と他人を尊重しない、むしろ他人への侮蔑的な行為の連続があり、その裏返しとして過剰なまでの自己溺愛が成り立っているのです。

臆病で猜疑心が強い

人間不信があるため猜疑心が強く、反面臆病な一面を持っています。それは近親者に対しても同様で、例えば、部下の忠誠心や気持ちに対しても異常なまでに神経質になり、忠誠度測定の手段として、側近の家族に対する常軌を逸した仕打ちを行うなどは、この一例と言えるのです。

感情交換<情報交換になっている

お互いのコミュニケーションの中味が情報交換活動に偏り、感情のやりとりが希薄になっている点が指摘できます。コミュニケーションの本質は、本来、情報を交換することよりもむしろ感情を交換することにあり、個人の感情が希薄になれば、当然コミュニケーションの量も減るのです。そして、情報交換さえ済めば、人と人との接触は殆ど消滅してしまうのです。感情とは実に厄介なもので、絶えず過剰なまでの潤いが必要なのです。乾いたコミュニケーションからは、信頼関係は生まれないようです。
世に名を知らしめた独裁者ほどの偉人(異常人?)ではないにしても、経営に携わる我々としては心したいところです。

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仕事と心

株式会社MELコンサルティング 代表取締役社長 安田芳樹

豊かな時代を謳歌する日本。しかしその陰では毎日のように凍えつくような、暗く非人道的な事件が相次いでいます。物質的、経済的な豊かさを手に入れた一方で、自己の利害のみに終始し争いも絶えず、必ずしも真に豊かな国や社会にはなっていません。 子供時代からの教育や社会環境にその原因があるのかも知れません。しかし、教育や環境の問題だけで結論づけるのではなく、経営や仕事上のスタンス、ひいては人としての生き方の問題として捉えることも必要ではないでしょうか。心の貧しい時代にあっては、企業も個人も真の豊かさや幸せを享受できるはずはありません。心豊かに物事に接するには素直で真摯な気持ちが大切なのではないでしょうか。

謙虚さと聴くということ

戦国時代の武将、黒田長政は毎月「腹立てずの異見(意見)会」という会合を開いていました。黒田家の家臣たちは、「何事を言われても腹を立ててはいけない」、という会合のルールに沿って参加し、長政をはじめとする幹部の行動、国の政治での道理に合わない行為をお互いに指摘しあったのです。家臣からの指摘をも天の声として素直に耳を傾け、謙虚に受け止めた心の持ち主であることが長政の名将の所以かも知れません。

私心と私欲

私心を持つことは悪いことではないはずです。突きつめれば、自己の目標に挑戦する姿勢も私心、私欲の端的な表われなのです。しかし、互いの立場や考え方を一切無視して自己実現の追求のみに偏重すれば、どこかで衝突や小競り合いが起きるのではないでしょうか。一人一人が私利私欲の追求のみに突っ走り、バランスを失った時、それは唯の「欲」でしかないのです。欲と欲とのぶつかり合いが惨めな結果を生むことは明らかです。

学び合う心

例えば、年端もいかない子供たちからも学び取れることが沢山あることを、我々は経験しています。いわんや、大人社会で構成された「企業」は学ぶべきことは山ほどあるはずです。上司・先輩は勿論、部下や社外の人たちからも多くのことを学びながら成長してきているはずなのです。互いに理解し合い素直に学び合う気持ち、企業でも生活の中でも忘れかけられた基本動作のはずです。学ぶ心で接する時、人は自然にやさしい気持ちに戻れるような気がします。

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改革のマネジメント2

株式会社MELコンサルティング 代表取締役社長 安田芳樹

「改革」は今や国・地方・企業・個人などあらゆるレベルで裾野を広げています。しかし、その取り組みが結果に結びつかない例も少なくありません。「マネジメント」として改革を捉え、組織の中にその動きを広めるためのポイントについて確認してみることにします。
P.F.ドラッカーは著書「ネクスト・ソサエティ」で、そこそこに成功した企業や経営者が陥りやすい間違いの一つとして「成功の否定」を挙げています。一度成功体験を味わうと傲慢になり現状に満足する。そしてあるべき姿をめざして改革することをしなくなるということへの戒めの言葉です。成功体験を否定し経営のフリーズ状態を解き組織風土の転換を図る手だてとして・・・。

評論家から主人公へ変身させる

幹部をはじめ社員の人材の質は悪くないのに、会社の中に評論家が多く、意見や発言は多いもののそれを誰も実行に移さない。結果の出ない理由を他人や他部門の批判にあてる。行動力が伴わず、自ら手足を動かそうとしないのです。しかし、今、企業に評論家は要りません。必要なのは批判や待ちの姿勢の人材ではなく、自らのアクションで組織を動かしていこうとするエネルギーを持った人を作る(集める)ことです。

揺さぶりによるミドル改革をねらう

会社内に改革の気風を広げるには、経営トップの旗振りやリーダーシップの重要性は言うまでもありませんが、それと同等、あるいはそれ以上にミドル(管理者層)の意識改革が大切です。仕事での実績があり現場レベルでの影響力が大きいミドルの考え方が組織に及ぼすインパクトは重大です。ミドル主体での改革案の提案、トップマネジメントとの直接対話機会の増加、あるいは人事・処遇面での刺激策も含め、ミドルの持つパワーを揺さぶりにより増幅させることが肝心です。

人の「活かしきり」を徹底する

人を活かす経営とは、強みを活かし適材適所でやる気を引き出し、本人の自己実現が可能な環境を作り結果を正当に評価する、と言うことになるのでしょうが、「活かしきり」の極意としては、経営者としての人を見る目が問われそうです。改革に必要な人材は、単に優秀であるとか、頭がよいと言うことではなく、経営の考え方に深く共感し、その人材が「能力」「情熱」「考え方」の3つの面で期待に応えるだけの要素を備えてくれているかどうかを見極める眼を持つことが大切です。

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改革のマネジメント1

株式会社MELコンサルティング 代表取締役社長 安田芳樹

「改革」は今や時代を映す言葉のひとつ。国家も企業も個人レベルでも改革は裾野を広げています。しかし、そうした改革行動が空回りし、精力的な取り組みが奏功しない例も少なくありません。鳴り物入りで始まった改革、その成功確率を高めるためには単なるガンバリズムや根性論だけでなく、「マネジメント」として改革を捉え、マネジメント・スタイルの転換も必要なのではないでしょうか。

改革が行き詰まるワケ

現状を打破しあるべき姿をめがけて改革することの必要性に今や誰も異論は挟みません。しかし、改革が行き詰まり、あげくには頓挫、後戻りという結果となることも多いものです。そうした結果を招いてしまうには、やはりいくつかの共通した原因があるようです。
【トップ主導になっていない】
経営トップは大号令をかけるだけで、より現場・現実に近いところに入り込まない。勿論、旗振り役は大事で役目ですが、社員と一緒に汗をかくことが忘れられているようです。言い換えれば、現場だけに問題を任せてしまっている、とも言えるのです。
【タテの関係だけで問題解決しようとする】
日本の企業組織はタテ型です。その特徴は独立した機能で個々のミッションを果たすことに懸命になりますが、必ずしもそれが全社全体の最適化につながるとは限らないことです。難しい時代になり全社の視点に立って資源配分し戦略転換することは、従来のタテの関係を変えていくことが必要になってきます。
【自前での改革には限界がある】
あらゆる経営課題の解決にあたって、自助努力や自己完結を得意とする日本企業はまだまだ多い。自社で企画し製品開発する、そして自社で製造し販売する。自前主義の典型です。改革には「スピード」が必要です。自前主義を脱却し外部リソースを有効的に活用することは、「時間をお金で買う」戦略です。外部リソース活用の必要性は十分に認識しながらも、実際の改革行動には意外なほど自前主義が中心となってしまっています。 今回は、改革を進めるにあたっての行き詰まるワケを確認しました。次回(改革のマネジメント2)は、改革活動成功のマネジメント・ポイントをお話したいと思います。

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夢にむかって

株式会社MELコンサルティング 代表取締役社長 安田芳樹

ここに、ある小学6年生の作文がある。(*)
「僕の夢は一流のプロ野球選手になることです。そのためには、中学・高校と全国大会に出て活躍しなければなりません。活躍できるようになるためには練習が必要です。僕は3歳の時から練習を始めています。3歳から7歳までは半年くらいやっていましたが、3年生の時から今までは365日中、360日は激しい練習をやっています。だから、1週間で友達と遊べる時間は5、6時間です。 そんなに練習をやっているのだから、必ずプロ野球の選手になれると思います。(中略)ドラフト入団で契約金は1億円以上が目標です。僕が自信のあるのは投手か打撃です。(中略)そして、僕が一流の選手になって試合に出られるようになったら、お世話になった人に招待券を配って応援してもらうのも夢の一つです、とにかく、一番の大きな夢は野球選手になることです。」

夢の実現

この作文の主人公は、当時、愛知県豊山小6年生のイチローこと、鈴木一郎選手です。アメリカ大リーグ、イチロー選手の若き日の思いです。イチロー選手は特別な存在、いわば天才かも知れません。しかし、天才的な資質があるだけでは成功には至りません。大きな夢や目標をもつことと、夢の実現に向けた気の遠くなるような努力のプロセスの大切さがこの作文は教えてくれているようです。 そして、周囲の人に対する感謝や報恩の気持ちを持ち合わせている小学生、イチローの素晴らしさも見逃せません。

成功者に学ぶ

日経新聞の連載「私の履歴書」に登場する各界の成功者の半生記には心打たれるものがあります。ここに登場した素晴らしい人たちは、それぞれの活躍の場は違えど、ある共通項があるそうです。それは、

・自分のやりたいことを持ち、それが高い目標になっている。
・その目標達成の途中で挫折や行き詰まりを経験している。
・そして、行き詰まりを乗り越えるための意欲と前向きさ、明るさを持っている。

*月刊「致知(2002年6月)」より一部抜粋

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会社の乾き

株式会社MELコンサルティング 代表取締役社長 安田芳樹

相変わらず新聞・テレビでは毎日のように殺人や悲惨な事件が報道されています。もううんざりと思う反面、被害者のことを考えると悲しく、そして強い怒りを覚えます。なぜ、こんな悲惨で非人道的な事件が続発するのだろうか。作家の五木寛之氏は次のような見解を示されています。

湿式から乾式へ

戦後日本の建築工学の発展は、「湿式工法」から「乾式工法」への転換にあるというものです。戦前の家屋は壁土を塗るとか、漆喰を作るとか、水を大量に使って家が建てられました。言わば湿式工法です。 しかし戦後60年の間に、壁土がベニア板やビニールの壁紙に変わり、アルミやガラスで囲まれるなど、一滴の水を使わなくても家が建てられるようになった、言わば乾式工法です。湿式は水を含み重く乾式は軽い。今の社会が軽く乾いた存在になっているのは、こうしたところにも原因があるのではないか、というものです。

人の道を知る

乾きの状態は社会現象だけにとどまりません。企業で働く人達も、あるいは企業自体も乾きの状態、潤いのない状態です。物質最優先で豊かな社会にはなりましたが、国も企業もどこか潤いを忘れてしまっています。言うまでもなく、企業は一時的な利益追求集団ではなくゴーイングコンサーンとして社会貢献することが使命です。そうした企業に導くためには、企業事態が情操を磨くことが必要です。

湿式と情操教育

情操を磨くには、道徳や倫理、あるいは宗教に根ざした考え方が基盤になるのでしょうが、所謂「人の道」を知ることの大切さを知りたいものです。多くの優れた経営者が「人生観を持つ」ことの大切さを強調します。そこにあるのは、「企業人である前に人間であれ」という捉え方のような気がします。仕事を通じてどれだけ豊かに、そしてどれだけ人間としての磨きをかけられるか、という考え方がそこにはあるようです。

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ゾーン

株式会社MELコンサルティング 代表取締役社長 安田芳樹

時としてスポーツ選手などが「ゾーン」という瞬間を経験すると言います。「ゾーン」とは、「実力がフルに発揮できる理想的な心の状態、最高のプレーができる状態」を言い、それは日常生活や仕事の上でも経験することもあります。我々はそうした瞬間に喜びや達成感を感じ自己の存在感を覚えます。しかし、やはりそこに至るまでには日頃からの物の考え方の転換や稽古、鍛錬が必要なのです。

遺伝子のスイッチを入れる

人間には60兆個の細胞があると言われます。そして、その細胞1個の核に含まれている遺伝子の基本情報量は、30億の化学の文字で書かれていると言います。 DNA研究の権威、村上和雄博士によると、膨大な量の遺伝子にはスイッチ機能が備わっており、解明された遺伝子で実際にONの状態になって働いている遺伝子はわずか5%程度だと言います。そして、この遺伝子は心の持ち方や考え方で働き方が変わります。夢中や必死の状態の時に、通常では起こりそうもない身体能力が発揮されるのも、こうした遺伝子の作用と関係があるようです。

ゾーン体験をする

村上博士は遺伝子のスイッチをONにし、眠れる遺伝子を働かせるために次のようなことを指摘しています。これは「ゾーン」に入るためのメンタルトレーニングであり、修養のための行動基準と言えそうです。

・感謝や感動の気持ちが大きいこと
・自分の身に起きることをプラスで捉えること
・目の前にあることに一生懸命に取り組むこと
・志を高く持つこと
・ギブ&ギブの精神で生きること

しかし、メンタルトレーニングだけではまだゾーンには入り込めないようです。やはり継続的な身体や技能のトレーニングも欠かせません。その効果的なトレーニングの方法として、丸山敏秋氏は「稽古」の重要性を強調しています。 稽古とは「古を稽える(いにしえを考える)」こと、すなわちお手本となる型や姿に学ぶこと、を言います。今、脳の活性化の有効な手段として、「丸暗記」や「素読」も再評価されています。東洋的心身論を取り挙げるまでもなく、徹底した型や姿の習得は「道」を究めるためには不可欠なようです。

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会議と生産性

株式会社MELコンサルティング 代表取締役社長 安田芳樹

我々は一日の会社生活の中で、いったいどれくらい会議やミーティングなるものに時間を費やしているのでしょうか。まさに会社での活動は「話し合い」の連続です。会社でのフォーマルな会議からプライベートな家庭での会話まで、話し合いを効果的に進めることは大きな生産性向上につながります。

会社での話し合いは問題解決目的が基本

情報交換やコミュニケーション目的としての会議もそれなりの意味はあるでしょうが、会社での話し合いの目的の基本は「問題解決」にあります。問題解決は単に案件に対する「処方箋」をアウトプットするだけでなく、大切な事は処方箋が実行されることにあります。 会議や話し合いが成功したかどうかは「処方箋の出来栄え」だけでなく、結果・成果に対する「満足度」が問われるのです。合意形成により満足度や納得度を高まることが実行につながる結論を生み出すのです。

話し合いを実りあるものにするコツ

会社でのフォーマルな話し合いを上手く進めるには、やはり一定の約束(ルール)を作って臨むことをお奨めします。

【ルール1:議論は幅広く、そして絞り込む】
会議時間の前半と後半を強く意識をして、前半は出来る限り話を広げ参加者の知恵やアイディアを吐き出す事に重点を置きます。そして後半に話の本質へと絞り込みます。所謂、発散と収束です。
【ルール2:意思決定者は進行役をしない】
会社での会議は往々にして議決権者が会議での司会や進行役となっているケースが多い。しかし、進め方の公平性や中立性を維持し、参加者の納得度を高めるためには議決権者と進行役は別の人が望ましいようです。
【ルール3:議題設定にも注意する】
折角の会議も会議の論点が集中せず方向が定まらない、これもよくあるケースです。これは会議の議題設定にも問題があります。例えば、「〜について」という大括りな議題の表示ではなく、「〜の解消のためには何を行うか」といった疑問形での論点を絞った表現により、ゴールの姿もハッキリします。
【ルール4:頭だけに頼らない】
色々な声や意見を整理するのに、頭(記憶)だけに頼るのは無理があります。議論の全体像が分かるように「書きながら議論する」スタイルが大切です。参加者全員が理解を同じくできるような演出を心掛けたいものです。

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夢の共有

会長 石黒重光

日本経済新聞2005年5月19日付「大機小機」に「夢の共有」という記事が載りました。
「国も企業も成長と繁栄の源泉が人の和にあることは古今東西の真理である。全社員の思いと夢が一致してこそ目標は達成される。全社員が共有できる夢を失った企業の凋落は早い。共有できる夢を提供し続けるのが経営者・幹部の仕事である。」
日本を代表する世界的企業のS社、消費革命をリードしたD社、鉄道・ホテルを中心に話題を提供してきたSグループなど、これまでの企業の夢の実現に先導的役割を果たした多くの人材が、経営者の夢に疑問を持ち、組織を離れ、競争相手に流出したといわれます。夢を共有しその実現に情熱を燃やしていた人材が組織を離れたとき、その企業の業績は急速に悪化します。
経営者と夢を共有している幹部は、次の共通点を持っています。

分かりやすく目標を示している

「経営者の思い」を分かりやすく翻訳し、その実現の重要性を熱っぽく周囲に語りかけ、求心力としての役割を果たしています。目標が身近な表現で定量的に明確に示されれば、その実現方法にも工夫が生まれ、取組みに熱が入ります。
目標は分かりやすいか、具体的にゴールが設定されているか、周囲のやる気を引き出しているかの再検討が大事です。

目標を示すことで周囲の能力を高めている

今までと同じことを繰り返していたのでは目標は達成できません。現在延長の取組みでは、遅かれ早かれ業績はダウンします。お客様の期待に応え、競争相手に勝つ能力の計画的、継続的なレベルアップが夢の実現には不可欠です。
目標が能力を高め、その達成が意欲を向上し、そして、自信が新しい課題に挑戦する意識を高めることをベースに、人づくりに取組んでいるかの再確認が必要です。

夢に挑戦する組織風土づくりに取組んでいる

それぞれの会社には、その会社に独特な社風・雰囲気があります。会社の常識、習慣といえます。「明るく元気のよい挨拶と暗く陰気な応対、新しいことに取組むのが好きな会社と従来からの分野から踏み出さない会社」など。 夢は明日への挑戦です。挑戦的風土は経営者・幹部の夢の実現に取組む意欲的な姿勢によって作り出されます。夢の共有は周囲から高く評価される常識と習慣づくりに結びついているかの見直しが重要です。

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仮説と検証

株式会社MELコンサルティング 代表取締役社長 安田芳樹

人は経験を通じて学びます。そして、時間の経過とともに成長します、確かにそれはその通りなのですが、会社の中の活動の一つひとつに従来のようにたくさんの時間を投入できなくなってきたことも確かです。無手勝流で試行錯誤を通じて学習するだけでは済まなくなってきたのです。

仮説を持つ

「まず、行動する」素早いアクションを促す素敵な言葉です。もちろん、行動なくして結果なしですが、「こうすればうまくいく」「こういう行動をとればこんな結果が得られる」という予測にもとづいた、言わば「事前の論理学習」をすることが、成功確率を高めるようです。 普段の仕事の中で、我々は経験を頼りに行動を優先します。行動の前に「考える」習慣もつけたいものです。

検証を忘れずに

検証とは「真偽を確かめること。事実を確認・証明すること」(大辞林)ですが、会社の中での検証活動は「やりっぱなし」にしないということでしょうか。良くも悪くも何事にも因果関係があります。 会社の中での検証活動は、結果が出た、あるいは出なかった活動の原因をキッチリと整理し、その後の活動に徹底的に活かすことです。多くの会社がこの検証活動を忘れてしまっているような気がしてなりません。

PDCAをまわす

マネジメントの基本はP(計画)D(実施)C(評価)A(行動)です。計画づくりは言い換えれば事前の論理学習であり仮説づくりです。試行錯誤より仮説を持つほうがスピードは上がります。そしてこまめな検証活動(C)は行動の精度の向上を可能にします。
自動車王ヘンリー・フォード曰く、「人生は考えることと行動することでできている。そして、今あることはその結果だ」と。

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3つのイエス

会長 石黒重光

「夢を持て、志を高く持て」といったら、「ナニを青臭い書正論を言っているのか」と一笑されるかもしれません。しかし、成長するには、「皆が夢・理念の実現を念じ、一生懸命に取り組むこと」が糧となります。
夢を実現している企業や人は、次の3つの問に対して自信を持って「イエス」と答えているといわれます。

目標は紙に書いてありますか?

願望や目標はだれでも持っています。しかし、この願望や目標を実現するためには胸に刻み込むことです。それには、思い、達成イメージ、目標状態をキチンと書き留めることで、その実現への思い入れと強い エネルギーが生まれます。
松下幸之助翁は「企業経営成功条件の50%は経営理念の確立であり、30%はその理念を基にした社風の形成。戦略・戦術など目に見える部分は20%」といわれました。

目標を達成するための計画は作ってありますか?

目標を実現するには具体的なシナリオが必要です。このシナリオを書くとき、ドノヨウな手順・手段が必要かを 一生懸命に考え、工夫します。現在延長の取り組みでシナリオを書くのは楽です。 しかし、これまでの計画をコピーしただけでは目標達成は期待できません。一歩一歩目標に近づく、新しい方法、発想を盛り込んだ計画が必要です。

計画通りに実行していますか?

目標や計画を待たない企業はありません。各社とも目標を設定し、計画を作成しています。ただ、目標や計画を作ることが目的となってしまい、目標が絵空事になり、計画通りに実行していないケースがあります。計画はこれからやることの約束です。約束どおりにやっているかどうかのチェックとフォローの徹底が大事です。 この「当たり前のことを当たり前にやる」ことが目標達成感を大きなものにします。

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