営業パーソンの習慣からみる、法人営業の3つの課題
〜ビジネスマーケティングの視点〜

取締役 渥美昌伴

営業パーソンの「4つの習慣」

中堅中小企業の「戦略実行支援」の中で、営業の側面から支援をさせて頂くケースがあります。このことを通じて常に感じることは、営業パーソンには共通する行動があるということです。それは、総合・専門商社の営業であれ、メーカー・製造業の営業であれ、情報・サービス業の営業であれ、業種業態に関係無く営業パーソンという職種であれば概ね共通しています。

  • (1)行くべきところではなく、行きやすいところへ行く
  • (2)営業パーソンの割には意外と営業時間が少ない
  • (3)計画(手段)・行動が目標達成につながらない
  • (4)沈黙が怖く、ついしゃべりすぎる

この4つの習慣から営業パーソンの課題が浮き彫りになってきます。今回は法人営業の場合に、特に重要だと思われる以下の3つの課題について考えてみたいと思います。

【課題1】目標を追いかけるとは「あといくら?」を追いかけること

営業会議の中で「あといくら売上があれば目標達成ですか?」の問いに明確に答えられる営業パーソンは確実に目標達成しますが、答えられない営業パーソンは目標達成が厳しいように思われます。つまり、目標と現時点での数字との差を追いかけていないということ、すなわち、「あといくら売上を確保できたら目標達成できるのか」を理解していないということです。この視点が欠如していれば、目標達成のための質・量の行動や判断になるはずがありません。
この視点を持ちつつ、ギャップを埋める施策を具体的に考えるには、売上構成式は使い勝手の良いフレームワークと言えます。売上=数量×単価の基本形のように、売上を構成するいくつかの要因に分解することで目標達成のためにやるべきことがより明確になっていきます。このとき、出来うる限り様々な角度から構成式の可能性を検討することで新しい発見や視点、アイディアが生まれてくるものです。
「あといくら?」を意識し、売上構成式でやるべきことを明確にしても、時間の経過とともに当初予定していた取り組みと、現状からやるべき取り組みとでズレが生じてくることがあります。行動や結果が予定通りに推移すれば問題はありませんが、必ずしも予定通りにいくとは限りません。仮に予定を下回る結果であれば、それは残り期間で取り返さないといけません。これが当初予定された行動とのズレになります。従ってこのズレを意識的に修正していくことが大切になります。つまり、定期的に修正計画を立てることで、常に「あといくら?」を追いかけることが可能になるのです。

【課題2】売上はお客様との接点確保から

「社内には売上の成る木はない」これはよく言われることですが、つまるところ、お客様との接点にしかチャンスは無いということです。また、多くの場合、お客様からの能動的な接点を期待することはできません。従って自ら多くの接点を求め活動することが重要になります。もちろん接点の形態は訪問だけに限らず、電話、メール、あるいは媒体への露出など様々です。
この接点「量」が確保されたら次に大事になるのが、その限られた接点の中で、どこにどのくらい時間をかけるのが良いのかという「質」の問題になります。使える時間が限られている以上、結果に見合った時間のかけ方が求められます。そこで大事になるのが、お客様の分類です。間違いなくお客様は1種類ではないのです。

【課題3】聴く力から始まるコミュニケーション

営業とは単にモノ売りではなく、お客様の問題解決のお手伝いであり、メリットの提供であるといえます。つまり、営業活動はお客様のニーズ、困っていること、悩んでいることをしっかりと理解し、それらを共有することから始まります。その意味で、顧客知識が重要と言えます。しかも、この情報はお客様自身も明確になっていない潜在的なものも含まれます。そして潜在的な問題を共有することでライバルとの競合において優位性を発揮することが可能になります。
そのためには聴く力が重要になります。人は自分の話しを聞いてくれる相手を好意的に受け止めますし、話し終えることで聞く姿勢が整います。営業は話すことが目的ではなく、その話を記憶していただくことが重要になります。どんなに上手に話しができても、聞く気の無い人には情報は歩留まりません。また、聴く力とは「しゃべらせる力」とも言えます。お客様が語りやすい、潜在的な問題が顕在化するような質問ができるかどうかが問われます。

【課題4】決めたことを愚直なまでに徹底する

行動しない限り結果はでません。いろいろなことを決めたり計画しても、その通りに行動しない限り結果はついてきません。しかし、多くの営業パーソンが計画してもやり切れていないように思われます。上記の3つの課題は営業の基本です。基本とはある種の決め事といえます。まずはこの3つの課題に徹底して取り組むことが営業力強化の早道と言えるでしょう。

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