いまさら聞けない人事制度の基本
〜イキイキ風土を実現するための人事制度(1)〜

株式会社MELコンサルティング 代表取締役社長 渡辺晴樹

今回から、『イキイキ風土を実現するための人事制度』と題して、組織活性化のための人事制度について、経営者及び人事・労務担当者を対象に4回シリーズで解説する。

渡辺晴樹

 「イキイキ風土を実現するための人事制度」の内容 

  • 第1回:いまさら聞けない人事制度の基本
  • 第2回:評価制度といったら人事考課制度
  • 第3回:処遇制度の根幹は賃金制度
  • 第4回:人材育成のための能力開発制度

いまさら聞けない人事制度の基本

日本の人事制度は、終身雇用や年功序列など、安定した雇用と経年と共に賃金が上昇するシステムで日本経済の高度成長を支えた。しかし、バブル崩壊により従来の成長が見込まれなくなり、終身雇用と年功序列による人件費の高騰は企業にとって大きな負担となった。その対応策として、成果主義人事制度を導入する企業が増えたが、成果主義一辺倒の弊害が指摘されるようになり、現在、多くの企業では人事制度の見直しを行うようになった。

人事制度とは

一口に人事制度といってもその範囲は広く、教育訓練・福利厚生なども人事制度に含まれる。ウィキペディア(Wikipedia)によれば、「人事制度とは、従業員の処遇などについての体系を整備し、ルール化することにより企業と従業員との円滑な関係を築き、事務管理の効率化を図るものである。また、従業員のモチベーションアップやスキルアップを図る制度も人事制度の重要な役割である」と説明している。
一般的に人事制度は、(1)人事評価体系(人事考課制度など)、(2)人事処遇体系(賃金制度など)、(3)能力開発体系(教育訓練制度など)の3つの体系で構成されている。経営理念、経営戦略、経営ビジョンを踏まえて、総合的に構築した人事制度をトータル人事システムという。

トータル人事システムの体系

複線型人事制度

グロービスのMBA経営辞書によれば、「複線型人事制度とは、特定の専門的な仕事を極める人材を専門職として処遇する、地域を限定した勤務を取り入れるなどして、組織内での従業員の多元管理を可能にする制度」と説明している。なお、ライン管理職ポスト以外に昇進・昇格の道がなく、ライン管理職として、より高いポジションだけを目指すのが「単線型人事制度」である。
複線型人事制度を導入している背景には、企業が従業員に求める期待役割が複雑化し、ポストや賃金の処遇で高いロイヤリティ(忠誠心や愛着)を引き出すのが難しくなってきたことによる。さらに、新卒一括採用の従業員と中途採用の従業員を学歴や入社年次で画一的に管理・運用していくことが困難となってきたことがあげられる。
複線型人事制度は、従業員のキャリアパスとして、ライン管理職ポスト以外に昇進・昇格の道を用意し、高度な専門能力を持った人の育成、活用、モチベーションの向上を図るために設けられた制度で多くの企業で導入されている。
なお、マネー用語辞典によれば、「キャリアパスとは、自分の仕事において、過去の職歴から現在の職務を通して今後の希望や予想による職歴まで一貫して俯瞰するためのキャリアプラン。キャリアパスは仕事の経験やスキルを積みながら自らの能力を高くしていくための順序を系統立て、将来の目的や昇進プラン、キャリアアッププランを具体化、明確化するものである」と説明している。

複数型人事制度の例

一般的にエキスパート(Expert)とスペシャリスト(Specialist)の違いは、エキスパートがその技術の背景まで知っている専門家でいわゆる権威、これに対しスペシャリストは特定分野を専門にする人、特殊技能をもつ人、その道一筋の専門家である。
なお、キリンビールの新人事制度では、(1)「マネジメントコース(幅広い分野、地域での業務経験を積み、応用の効く専門性を深め、全社的な観点から業務遂行(将来的にはマネジメント)できることを期待される人材・コース)」、(2)「スペシャリストコース(研究開発部門における特定分野の専門能力を伸ばし、その高い専門性を生かして主体的に業務遂行できる人材・コース)」、(3)「エキスパートコース(実務能力、技術・技能力を高め、業務を円滑に遂行し、また実務改善を指導できる人材・コース)」の3つのコース別の資格を設定している。

オピニオン一覧へ戻る

▲このページのトップへ